福岡市議会議員・山口つよし

2008.03.18 : 平成20年条例予算特別委員会

◯山口委員 留守家庭子ども会事業、外郭団体の改革、市民協働事業とNPO助成及び学校規模の適正化事業に関して質疑を行う。初めに、留守家庭子ども会事業について尋ねる。今回提案の市長案である午後5時までの無料化については、少子化対策及び子育て支援は経済面も含めた手厚い支援が必要であること、午後5時までの無料が有料化によって退会を余儀なくされた児童がいること、我が党の地域語る会等を通して得られたイメージに沿うものであること、全児童対策は1年生から6年生のすべての児童に無料で今後展開させていくこと、以上の理由から、基本的に賛意を表するが、以下の点について尋ねる。まず、有料であった18年度及び19年度の入会児童数の4月当初からの増減はどうなっているか。さらに、退会理由のうち、有料化による影響との回答はどの程度あったのか。


△こども未来局長 入会児童数の推移については、18年度は4月当初9,975人であった児童が、制度変更後の9月末現在では1,176人減の8,799人となり、年度末には4月から1,699人減の8,276人となっている。19年度は4月当初9,810人であった児童が、9月末現在では337人減の9,473人、直近の1月末現在では、4月から872人減の8,938人となっている。次に、平成18年9月に制度変更を行った際の調査結果によると、新制度を不満として退会された方は退会者のうちの6%程度、経済的理由で退会された方は6%程度、合わせて12%程度である。


◯山口委員 留守家庭子ども会の入会範囲について、4年生を含む政令市は幾つあるか。また、土日を除く春・夏休みなどの休業日の対応の実態はどうなっているか。


△こども未来局長 本市が把握している19年度の状況としては、17政令指定都市のうち、本市の場合の留守家庭子ども会に当たる放課後児童クラブにおいて1~6年生までの全学年を対象としているのは、大阪市のみである。また、施設に余裕のある場合などに4年生以上を受け入れているのは7市である。なお、これら8市においては、春・夏・冬休みなどの長期休業中においても4年生以上の受け入れをしている。


◯山口委員 市民の中には、この無料化とセットで、現行3年生までの範囲をせめて4年生まで行ってほしいという要望がある。我が党としては、近い将来この4年生までの拡大を強く要望しておく。次に、春・夏休みなどの長期休業日の対応についてであるが、保護者は4年生までの拡大を強く要望されている。この際、休業日に限り4年生までその範囲を拡大すべきと考えるが、市長の所見を伺う。


△副市長 4年生の長期休業期間中だけでも入会させてほしいという要望があることは承知している。20年度に保護者などを対象とした希望調査や施設の現地調査などを行い、4年生の春・夏休みの休業期間中に限って受け入れることができないか、前向きに検討したいと考えている。


◯山口委員 前向きに検討するということであるが、ぜひともやってほしい。次に、外郭団体の改革について尋ねる。20年度は行政改革プランを策定する計画になっている。その中で重要な位置づけである外郭団体の改革は、平成16年に実行計画が発表され、約4年が経過しているが、20年度においてどのようなことをするのか。


△総務企画局長 外郭団体改革実行計画は、外郭団体に関する改革について基本的な考え方、改革の視点等を示すものとして策定したものである。当計画の期間は4年間としており、19年度が最終年度であることから、現在、平成20年6月を目途に計画の改定作業を行っている。


◯山口委員 今月、各団体の経営ビジョンを公表すると聞いているが、その対象は本市が出資しているすべての団体を公表するのか。


△総務企画局長 外郭団体の使命あるいは目標などを示した経営ビジョンは、出資比率が25%以上で本市が主体的に関与を行う35団体について、ホームページに公表する予定である。


◯山口委員 次に、改革に対する基本的な考え方について尋ねる。まず、団体の必要性の検証、見直しを挙げているが、どのような計画で団体設立当初の目的が現在では薄れている団体の検証、見直しを進めていくのか。


△総務企画局長 各団体の必要性の検証、見直しについては、現在行っている外郭団体改革実行計画の改定に当たり、各団体の今後のあり方等について方向づけを行うこととしており、現在、団体の経営状況等に関する資料等に基づき検証を行っているところである。今後は所管局と十分協議を行いながら、各団体の存在意義についても検証を行い、方向性についての位置づけを決定する予定である。


◯山口委員 経営評価システムの対象を25%以上の出資団体としているが、なぜすべての出資団体について、この経営評価システムの対象としていないのか。


△総務企画局長 出資比率が25%未満の団体については、団体に関与できる法的な権限が弱く、また国、県が主体となって設立し、指導、監督を行っている団体が多いことから、外郭団体として画一的に関与を行うことは困難であるため、一定の法的権限を得る25%以上の出資団体について、経営評価システムの対象としている。なお、出資比率が25%未満の団体が行っている事業の中には、本市が推進していく施策と密接に関連しているものもあり、団体の経営状況によっては施策の円滑な推進が困難となる場合もあることから、今後とも適宜、各団体の経営状況について把握するとともに、各局の施策運営の一環として関与すべきものについては、経営の健全化に資するよう、今後とも各局と連携しながら個別に適切な対応を図りたいと考えている。


◯山口委員 25%未満は経営評価システムの対象にならないということであるが、市民の税金を投入してこれら団体に出資している以上、すべてにわたりチェックをする必要がある。そういう視点が大事であるということを申し述べておく。次に、経営責任の明確化については、すべての出資団体まで広げて点検を行うのか。


△総務企画局長 経営責任の明確化については、外郭団体改革実行計画及び経営評価システムの対象団体である35団体について、これまで法人の基礎的情報、組織概要、財務状況、前年度の事業概要、さらに当該年度の事業計画、これらに関してホームページ等で公表を行っているが、新たに各団体の経営理念についても公表することとしている。これらの取り組みをすべての出資団体へ一律に広げることについては、各団体への関与の度合いが異なることから困難と考えているが、25%未満の団体についても、本市が推進している施策と密接に関連があり、各局の施策運営の一環として関与すべきものについては、今後とも各局と連携しながら個別に適切な対応を図りたいと考えている。


◯山口委員 18年度決算時点で本市が出資する株式会社の中で、利益が出ている会社数と、反対に赤字の会社数は何社か。


△総務企画局長 出資比率が25%以上の会社8団体と、本市が一定の関与を行っている25%未満の会社5団体の計13団体のうち、損失を計上しているいわゆる赤字の団体は2団体となっており、その他の11団体は黒字となっている。


◯山口委員 赤字の団体について、今後の進め方はどのように考えているのか。


△総務企画局長 損失を計上している団体については、団体の自主的、自立的経営の観点から、一義的には団体みずからの経営責任のもと経営改善に向けた努力を行うことになるが、本市としても、所管局を中心に、赤字の原因、団体としての改善方策等を把握、分析して、必要に応じて最善の対応策を講じていきたいと考えている。


◯山口委員 赤字とは逆に利益が出ている会社に対しては、このままの状態を続け、今の出資はそのままとするのか。今後どのような取り組みを行うつもりなのか。


△総務企画局長 本市においては、18年度の(株)福岡市民ホールサービスのように、民営化に向けて出資の段階的な引き揚げを進めている団体もある。今後も官から民への時代の流れの中で会社の自立経営を促し、民営化を含めた改革を進めていく。なお、本市の株式会社への出資については、公益性の実現という観点から行っているものであり、短期的な利益だけに着目して判断するものではなく、出資目的や意義、経営状況等を勘案しながら総合的に判断する必要があると考えている。


◯山口委員 確かに決算の赤字、黒字だけで判断はできないと思うが、これらを長期的に見て、本市にとって有益かどうかも大きな指標になると思う。かつて25%未満を本市が出資した株式会社で、約2億円の損失をこうむった事例があるが、今後このような二の舞を起こしてはならない。企業においてスクラップ・アンド・ビルドは普通にあり得る話である。経営状況を把握していないと、何の情報も得ることができず、手の打ちようもない状況になるのが当たり前である。当初の出資目的が薄らぐか、または、例えば10年を経過した株式会社に対する出資金は回収し、ひとり立ちしてもらうなどの方針を作成したほうがいいのではないかと考えるが、当局の意向を尋ねる。


△総務企画局長 外郭団体については、平成16年に策定した外郭団体改革実行計画に基づき、事業の必要性や各団体の存在意義について検証を行い、設立目的が薄れた団体は、民間でサービスの提供が可能なもの、民営化が可能なものなどについて事業の縮小や廃止等を進めているところであり、今後も引き続き検証、検討を進めていきたいと考えている。株式会社についても、各団体の個別の状況に応じて民間への業務移管や株式売却による完全民営化など、幅広く民間活用の方策の検討を行っていく。なお、25%未満の会社についても、各局の施策運営の一環として関与すべきものについては、経営の健全化に資するよう、今後とも各局と連携しながら適切な対応を講じたいと考えている。


◯山口委員 今後の方向として、ただ三セクを減らすだけでいいとは考えていない。先日、高松市の商店街再生の状況を視察してきたが、商店街の土地所有者と開発業者、そして行政が関与することで、国、県の補助金が支出され、うまく再生事業として成り立っていた。このような三セクは大事である。しかも、事業が終われば行政は手を引けばよく明快である。本市の外郭団体改革について、株式会社に対しどのような方向づけを行うのか。


△総務企画局長 本市が出資する株式会社については、市の行政目的を達成するために民間資金の活用による柔軟な財政運営が求められる業態に出資を行っており、今後も公益性の実現の観点から必要とする団体については、適切に活用していく必要があると考えている。一方で、株式会社等への新たな出資については、その必要性を十分検討しながら、既存団体の活用等により極力抑制することとしており、また所期の目的を果たした団体や業務が類似している団体などは統廃合することとしている。今後とも株式会社等への出資については、当初の出資目的や意義が現在も認められるものかどうかの検証を行い、適切に対応したいと考えている。


◯山口委員 実利をとる株式会社は、まず採算がとれていることが重要である。そのためには即時に意思決定を迫られる場合がある。決定までに時間がとれないときがあり得るのである。本市からの出向職員は優秀なので、この三セクの経営に携わっている方もいると思うが、役所時代は文書で何人もの目が入るために、不備な点は改められ、また実行責任が分散されている。しかし、この間、随分時間がかかっている。企業の場合、決断までの時間に余裕がないときなど、出向職員は企業経営の経験値が不足なため、ややもすると間違った判断をすることになる。ずるずると時間を費やし、結果としてタイミングを逃し、本市に対して大きな損失を出したサンピア博多の例もある。出向職員が株式会社の経営に携わるのは、今後はやめたほうがいいと意見を申し述べておく。株式会社は臨機応変の対応が特に問われるから、プロに任せるべきである。市長も民間出身なので、理解していただけるのではないか。本題である外郭団体の改革では、株式会社への出資に対し、売却する勇気を持って見直し、経営評価についてはすべての団体に対して行うべきではないかと考えるが、市長の所見を伺う。


△市長 三セク全般についての考え方は、やはり本市の本体の事業と同じように、まずきちんとした経営の透明性を示すことが大前提だと思う。私の基本的な認識としては、赤字ならだめなのか、黒字だったら必ず民営化なのか、この辺は少し、現実的にはそれぞれの会社の経営状況を見て、それから存在意義が本当に三セクという形態で必要かどうかという根本的な議論が、まず一番大事であると考えている。株式会社への出資については、経営の健全性と公共性の発揮、この両立という観点から、やはり総合的にどうやってこの先、ある意味では処分するなり、民間に任せるなり、やはり個別に考えなければいけない。ずっと役所にいた人が出向して、経営に携わるのが大丈夫かという、確かにそういう事例は過去にもあったと思うが、その点はよく経営状況の把握にしっかりと努め、今後、ほかの出資者との協議を進めながら、慎重にやっていかなければいけない。改革をいとうものではなく、本当に真に意味のあるものかどうかということを見きわめるという意味で、しっかりやっていきたい。また、経営評価システムについては、それぞれの団体が設立された経緯であるとか、出資比率であるとか、技術的に少し難しい面があり、一律に適用できるかどうかというのは個々のケースにもよるが、その会社が社会的に存在意義があるかどうかということを根本に、常にチェックをしていくということで対処していきたい。


◯山口委員 この外郭団体の改革はいいチャンスだと思っている。この際、いろんな意見を集約しながら、相手のある話なので、所管局だけではなく、よその部、また市の幹部も一緒に注意深く見守っていくように意見を申し述べておく。次に、市民協働の新事業の概要について尋ねるが、20年度のスケジュールと募集の時期、事業予算はどうなっているのか。


△市民局長 20年度より新たに導入する共働事業提案制度は、これまで行っているNPOへの委託や助成事業とは異なり、市民の新しい視点や発想によるきめ細かいサービスを提供するため、NPOから事業提案を募集・選考し、企画の段階からNPOと市が共働で事業を実施するものである。20年度のスケジュールは、4月に本市から事業テーマを示し、6月から約1カ月間でNPOから事業提案を募集、その後、市民や企業、NPOなどで構成される審査委員会で事業を選定し、21年度から共働事業を実施したいと考えている。また、事業予算については、4事業程度を想定しており、1事業の事業費の限度額を400万円程度と考えている。


◯山口委員 他都市では同様の制度を活用して、どういった事業が行われているか。


△市民局長 他都市の事例としては、神奈川県では不登校対策として、学校とNPOが運営するフリースクールが、不登校児の社会的自立や学校生活再開のためのサポートプログラムを行う事業などが、また、横浜市では高齢化が進む地域で住民と一緒に介護予防のためのサロンや学習会を開設する事業などが行われている。


◯山口委員 先ほどのスケジュールでは、本市の事業の公募は1カ月で締め切りということであるが、このような短期間で本当に応募者があるのか心配である。その点についてどのように考えているのか。


△市民局長 応募期間については、既に同様の制度を実施している他の自治体でもおおむね1カ月程度で行われており、応募も相当数なされている状況があるので、本市においても1カ月程度の応募期間を設けることを予定している。なお、募集前には市政だよりでの広報やNPOに対する分野別にテーマ説明会などを開催し、制度の概要やスケジュールなどを周知したいと考えている。


◯山口委員 本当にこの1カ月の期間、応募者が多数出ることを期待している。また、応募する立場である今のNPOとボランティア数について尋ねるが、平成16年の団体数と比較し、現在の傾向と大まかな活動分野はどうなっているのか。


△市民局長 福岡市内で認証を受けたNPO法人数については、16年度末は353法人であったが、毎年約70法人が新たに設立されており、平成20年2月末現在で577法人となっている。なお、ボランティア団体数については、市域全体の把握はしていないが、本市のNPO・ボランティア交流センターあすみん及び市社会福祉協議会のボランティアセンターでの登録数としては、16年度は874団体、平成20年2月末では839団体となっている。また、活動分野については、福祉や環境、教育、災害など幅広い範囲で活動が行われているが、NPO法人では特に保健・医療・福祉、社会教育、まちづくり、子どもの健全育成、またNPO活動への支援などの割合が高い状況となっている。


◯山口委員 NPO団体やボランティア活動を支援する施設として、本市では福岡市NPO・ボランティア交流センターあすみんを設置しているが、この施設の概要と現在の利用状況はどのようになっているのか。


△市民局長 福岡市NPO・ボランティア交流センターあすみんは、市民の自主的かつ自発的な活動の促進を図り、市民主体のまちづくりの実現に寄与するため、平成14年10月に中央区大名の福岡市青年センター内に開設している。その運営は、18年度からは指定管理者制度を導入し、NPO法人による運営を行っている。あすみんでは、NPO・ボランティア活動に関する情報の提供などのほか、活動や交流の場の提供、NPOを設立するに当たっての相談や各種講座を実施しており、18年度は3万568人、19年度は平成20年1月末現在で2万9,136人の方が利用している。


◯山口委員 あすみんでNPOやボランティア団体から相談を受けているということだが、相談件数はどれくらいあるのか。


△市民局長 NPO・ボランティア団体からの相談件数については、18年度は186件、19年度は平成20年2月まででは125件で、内容はNPOの設立や団体運営、税務会計などの相談等を受けている。


◯山口委員 NPOやボランティア団体の方は、あすみんを非常に大事に思い、また活用されている施設ではないかと思う。あすみんが入居している福岡市青年センターは、老朽化等のため整備について検討すると聞いており、耐震化工事がこれから始まるという話も聞いているが、この福岡市青年センターがなくなっても、どこかにあすみんという活動支援の拠点をきちんと確保されるよう要望しておく。次に、NPO活動支援基金について尋ねるが、当初の基金積立額とこれまでの寄附金総額、そして助成総額及びそれらを年間当たりに直すと幾らになるのか。また、現在の基金残高は幾らか。


△市民局長 NPO活動支援基金は16年度に設置したが、当初の積立額は1,000万円である。これまでの寄附総額は、19年度までの4年間で250万6,882円、助成総額は254万435円となっており、年間当たり寄附・助成ともに60~70万円程度となっている。基金の現在高は、平成20年2月末現在で1,017万8,000円である。


◯山口委員 この助成制度は寄附をもとにしているため、非常に重要な助成制度であるが、寄附金額は本当に少ないと思う。これはこの制度の周知が足りないからではないか。この基金助成制度について、今後はどのような対応をしていこうと考えているのか。


△市民局長 NPO活動支援基金制度については、これまで市政だよりやホームページ、チラシなどでお知らせするほか、寄附をしていただく企業に対しては、平成19年1月に市内1万6,000社にチラシを配布している。また、市内のNPO法人に対しても、基金への寄附については税控除の優遇措置があることなどをお知らせしている。指摘のように寄附金が少ないことについては課題として認識しており、今後は基金制度をさらに知ってもらうため、基金により助成を行ったNPO活動をホームページで具体的に紹介したり、あすみんで実施する企業対象の社会貢献セミナーなどで基金制度の説明を行うとともに、寄附をいただいた事業者名を明らかにする助成方法の検討や、NPO団体と共働で基金を活性化する事業などへの取り組みなど、さらなる制度の活用を図りたいと考えている。


◯山口委員 NPO活動支援基金について、今後しっかりとした運用を行うよう意見を述べておく。次に、今後、企業を引退して地域に戻って来られる団塊の世代の方々に対して、何か地域やNPO・ボランティア活動に参加していただく方法を考えているのか。


△市民局長 団塊世代の方が地域活動やNPO・ボランティア活動にいかにして参加していただくかは、今日的な課題と認識している。あすみんにおいては、情報提供や企業に対する社会貢献セミナーを行うほか、19年度は中央区と連携して団塊世代がNPOや地域活動に積極的に参加していただくきっかけとなる地域生きがい創造塾を実施したところである。20年度には、シニアを対象にNPO活動の基本や市内の活動団体の紹介、またNPO団体による面接会などを行うボランティア相談会事業を行いたいと考えている。


◯山口委員 先日、視察に出かけた千葉県我孫子市では、平成9年に50代男性を対象としてアンケートをとっており、そのアンケートの内容で、退職後はどうするのかの問いに回答された50%の500人が、引退後は地域の何かの役に立ちたいと答えられたそうである。そこで我孫子市では協議を重ねた結果、平成17年にシニア世代歓迎の集いを開催し、その後、シニアインターンシップを開催している。この集いは、NPOやボランティアのグループとシニアの方々を引き合わせることを目的としている。退職された人は、地域でどんな活動をしているグループがあるのかを知らないし、何かに参加したいと思っても、紹介でもない限り活動に参加するのは無理な話である。NPOでも活動メンバーをふやしたい団体がある。そこで行政が橋渡し役となり、お互いの出会いの場をつくっている。また、インターンシップだから、いろんな事業所で幾つも体験実習ができる。利用者は、もし自分が思っていた内容でなくても、インターンシップだから気軽に断ることができる。本市でもこのシニアインターンシップを行ってみてはどうか。結構よい結果が生まれるのではないかと思うが、所見を伺う。


△市民局長 インターンシップ制度については、シニアの方がボランティア参加のきっかけとなる有意義な取り組みであると考えている。20年度に行うボランティア相談会においては、NPO活動の体験などを取り入れることも検討し、NPO・ボランティアに関心のある方が活動に参加しやすくなるよう、事業の充実を図りたいと考えている。


◯山口委員 ぜひ検討し、取り組んでもらいたい。我孫子市のインターンシップは本当にお金がかからない事業であるとの説明を受けた。昨今、事業をするにはお金がかかるのが当たり前だが、お金がかからずに地域を活性化させる本当にすばらしい取り組みだと実感したところである。またNPO団体の資金源について、我孫子市では資金助成などで行政に頼るのではなく、団体の自助努力が必要であるとされていた。これは自前で行っていない事業は一人前とは言えないという市民感覚が我孫子市にはある。この補助金については、市民の代表5人が3年ごとに白紙に戻して再度見直すという制度もつくっている。また、構成団体の活動が長期化していると、固定的な価値観にとらわれやすいのだが、メンバーそのものが閉鎖的な仲間づくりになることが懸念されるとして、新メンバーをふやすことを奨励しており、これには感心したところである。行政の役割としては、役所内部の連絡調整が大きな課題であり、改善の必要がある。市民活動の支援は団体の自立支援を最優先し、市民の協働に対しては、市民を安上がりな労働力ととらえないようにすること、これが大事だと言われていた。大事な視点である。そこで本市では、NPO・ボランティア活動の支援について、行政はどうあるべきと考えているのか尋ねる。


△市民局長 NPO・ボランティア活動などの市民活動については、自主的、自立的に行われることが基本であると考えている。本市としては、多くの市民の方や企業などにNPO・ボランティア活動の意義を理解していただき、さらにボランティア活動に参加していただけるよう、あすみんを中心に情報や活動の場の提供を行うとともに、NPO支援基金による助成、共働事業提案制度の実施など、NPO・ボランティアが活動しやすい環境づくりを進めていきたいと考えている。


◯山口委員 NPO・ボランティア活動の促進については、市職員も参加し、ともに促進することも必要だと思うが、本市はどうか。市職員が地域活動やボランティア活動に参加する啓発や働きかけを行っているのか。


△市民局長 職員が地域活動やボランティア活動に参加するための啓発や働きかけについては、職員がグループで行っている災害支援や清掃活動などへの参加の呼びかけや、NPO活動に関する情報を提供するとともに、NPOとの共働に関する相談、実際にNPOの活動現場を訪問するNPO体験講座などを実施しているところである。


◯山口委員 これまでNPOやボランティアの方々などが積極的にまちづくりや福祉施策に協力いただいている。また自治協議会でも、運営されている方々はそれこそ手弁当で活動されている場面をよく見かける。皆さんから、運営に携わる人手が足りない、役につく人がいないなどの話をよくされる。先ほどはシニアインターンシップの提案もした。これからの本市の市民協働はこういう方向にしていきたいという市長の所見を伺う。


△市長 NPO活動は日本では1980年代ぐらいから始まってきたように思う。今、本市でもNPO活動の数や質がともにかなり上がってきており、私どもとしては、決して行政の下請みたいな仕事をするのではなく、本当の意味でのパートナーシップ、お互いが補完をし合って共働事業ができていく、そういった環境がもう既に整いつつあるのではないかと認識している。つまり、それだけ福岡のNPO活動の質が上がってきたと認識している。そういう背景があり、今回初めてであるが、この共働事業提案制度を行うこととしており、1事業当たり400万円で4事業ということで、いきなり大きなことにはならないかもしれないが、「何だ、役所はこんなことも思いつかなかったのか」というようなおしかりを受けるぐらいのすばらしい内容が来るかもしれず、ちょっと怖いなというところもあるが、大変期待をしている。ぜひ周知徹底を早く行い、1カ月では足りないかもしれないが、ぜひ皆さんに注目をしていただきたいと思っている。これから先、団塊の世代がだんだん地域に戻ってくるという状況もあるので、ぜひそのあたりにも連動して、いい提案があるものと期待している。また、我孫子市のシニアインターンシップについては、お金もかからず、先進的で大変いい制度だなと思ったところである。私のところにも大手の企業から、これから先何年間も大量の退職者が出るので、役所として、NPOやボランティアとのマッチングをやってくれないかという相談や要望も来ており、ニーズが高いと思う。大変貴重な提案をいただいたので、我孫子市の例をしっかり研究し、ぜひ参考にしていきたい。


◯山口委員 新規事業であり、最初が肝心だと思うので、しっかりとした取り組みを要望しておく。次に、小学校の児童数における過大規模校や小規模校など、学校規模について尋ねる。20年度の教育費予算は、昨年度に比較し31億9,700万円余増額されている。この点は大いに評価できるが、そのうち、校舎や体育館の耐震化工事の予算額として20億9,300万円余が含まれているので、これを除くと11億400万円余の増額となる。本市における教育予算はまだまだ少ないのではないかとの意見を申し述べておく。今回の新規事業の中で学校規模の適正化事業の予算については、1,600万円と普通の会議費用としてはやや高目の予算になっているが、何を予定されているのか。また、この検討委員会は何人で、どのようなメンバーで構成するのか。


△教育長 学校規模適正化事業の事業費については、検討委員会委員報酬、会場借り上げ料、調査業務委託費、その他事務費等を計上している。検討委員会は十数人を予定しており、議会代表者や保護者・地域代表、学識経験者、学校関係者等による委員構成を予定している。


◯山口委員 調査業務委託費にかなりの予算を計上しているので、できるだけ正確に、またいろんな角度から調査を実行するよう要望しておく。この適正化事業を始めるきっかけは何だったのか。新規事業に至った経緯を、また、小規模校の教育課題についてどのような点が挙げられるのか尋ねる。


△教育長 学校規模適正化事業については、全国的な少子化傾向の中で、本市においても児童生徒数の減少により小規模な小中学校が増加しており、クラスがえができない学校も、昭和56年に15校であったものが19年度には倍増して30校となっている。この小規模校が抱えるさまざまな教育課題を早急に解決するため、学識経験者等から幅広い意見をいただき、課題解決に向けた具体的な方策を検討したいと考えている。小規模校の課題としては、クラスがえができないことにより人間関係が固定化し、児童生徒の社会性や多様な人間関係が育ちにくいということ、学級内でのグループ活動を行う際、グループ数が少ないため多様な意見が出にくく、学習活動に支障があるということ、体育における集団競技、また社会科見学や運動会など、一定規模の集団を前提とした教育活動が制限されるということ、9学級以下の中学校では全教科の教員配置ができないことなどが指摘されている。


◯山口委員 検討委員会では小規模校の教育課題解決を図られるとのことだが、学校の統合を視野に入れているのか。また、教育委員会では、いわゆる適正と思われる1校当たりの児童数と学級数はどれぐらいが適当と考えているのか。


△教育長 検討委員会においては、小規模校が抱える教育課題を解決することを目的としており、学校の統合についても検討していただくものと考えている。なお、本市における学校の適正規模については、20年度に設置する検討委員会の中で検討していただくが、学校教育法を初めとする関係法令では、児童数による定めはなく、学級数について12~24学級が適正規模とされている。


◯山口委員 学級数が適正規模を下回った時点ですぐに統合の対象になるのか。それとも一定期間の推移を踏まえて統合の対象になるのか。


△教育長 検討の対象校については、現在の学級数に加えて、ゼロ歳児から5歳児までの幼児数や各地域の転入・転出の傾向などをもとにした将来推計、住宅開発計画等を踏まえ、継続的に小規模校である場合には検討の対象にしたいと考えている。


◯山口委員 本市では統合の事例として博多小学校がある。博多小学校の統合は、どういったスケジュールで進められたのか。


△教育長 博多部4校の統合については、7年度から統合に向けた地元協議を開始し、8年度に各校区より統合推進の要望書が提出され、通学区域審議会の答申、市立小学校設置条例の改正を経て、平成10年4月に旧冷泉小学校を統合場所として博多小学校を開校したところである。その後、平成13年4月に現在の新校舎に移転している。


◯山口委員 今回の検討委員会で議論される対象校の答申は、いつごろを予定しているのか。


△教育長 検討委員会ではおおむね1年間での検討を予定しており、20年度末には提言をいただけるものと考えている。検討委員会における検討内容については、機会あるごとに議会に報告し、市民や議会の意見を反映させながら進めていく。


◯山口委員 小規模校については、確かに先ほど述べられた教育課題を克服するため、統合も視野に入れておかなければいけない時代になったと思う。クラスがえや修学旅行をなくして児童の健全な成長を妨げてはならない。しかし、小学校の統合となると、通学路の問題や、どこを統合した学校とするかなど、さまざまな問題が出てくる。総論は賛成だが各論を詰めていくと反対というのでは、決して前に進まない。ここは子どもの視点を第一に、ぜひ見直しに当たってほしいと考えるが、教育委員会の所見を伺う。


△教育長 小規模校の課題解消のための対応策については、学校の統合も含めて検討委員会で十分な議論を行うこととしているが、指摘の点についても、本市の子どもたちによりよい教育環境を提供するという視点に立って検討したいと考えている。


◯山口委員 過大規模校についてはどのような教育課題があると認識しているか。


△教育長 過大規模校における問題点については、運動会や遠足、全校集会など、集団を前提とした活動に制約があるということ、少人数指導を行うための教室が不足しているということ、人数を理由に社会科見学を断られる等の報告を学校から受けている。


◯山口委員 東区の松島小学校の場合、本市で2番目の過大規模校だが、3年前に過大規模校解消について尋ねた際、当時の教育委員会は、現状のままではよくないので前倒しで検討を始めるという趣旨の答弁であったが、今はどのような検討状況にあるのか。


△教育長 松島小学校については、平成19年5月1日現在、児童数1,069人、32学級となっており、仮設教室を設置して対応しているが、20年度には校舎を増築し、仮設教室を解消する。児童数については、幼児数や転入・転出の傾向をもとにした推計では微増の傾向にあるが、一方、校区内でも分譲住宅の多い地域では幼児数が減少傾向にあり、今後とも児童数の詳細な推計や住宅開発の状況把握に努め、必要な対応策について検討していきたい。


◯山口委員 地元の反応はどうか。どのような意見が出ているのか。また、過大規模校の解消方法についてどのように考えているのか。


△教育長 保護者や地域の方からは、学校の新設や校舎増築の要望のほか、通学区域の調整に関しては地域コミュニティーとの関係から小学校区は変更すべきでないとの意見をいただくこともあり、関係者の意見もさまざまである。過大規模校の教育環境を改善するための対応策については、学校の分離新設、通学区域の調整、校舎の増築などがあり、今後とも児童数の推移や校区の状況等を的確に把握しながら、適切な対応を行っていく。


◯山口委員 小中学校の児童数については、全国的に少子化の影響で減少傾向にある。本市も例外ではないが、場所によっては逆に増加している地域がある。過大規模校の場合、1,000人を超えると学校運営の面から見ても、先ほど教育長が答弁したようにさまざまな教育課題が出てきている。この問題は教育委員会だけで解決するのは難しい。1校当たりの児童数を調整するための校区の再編成は、自治協議会が校区単位で設定されている本市にとって容易なことではない。学校の選択制も認めていない本市は、過大規模校の解決策の一つとして、学校の分離新設をとらなければいけない。そうなると、土地と建物の予算が必要となる。今回、過大規模校として課題があると提示した松島小学校の場合は、学校の分離新設も視野に入れて検討しなければいけないのではないかと考えるが、最後に市長の見解を伺い、質問を終わる。


△市長 過大規模校や小規模校など、適切な学校規模はどうあるべきかということは、教育環境を守る上ですごく重要なことである。松島校区では、住宅開発によって児童数が今大変ふえてきて、過大規模校になっていることは承知している。過大規模校については、教室不足が生じないよう増築により教室の整備をしていくこととしている。先ほどの答弁にあったように、分譲住宅の多い地域はだんだん子どたちが少なくなっていく一方で、マンションが建つといきなり子どもがふえるので、今後、児童数や周辺の住宅開発をよく見きわめながら、今後の教育環境の整備に慎重に努めていきたい。

 

福岡市議会議員
山口つよし

公明党 福岡市議団

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